どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
副鼻腔嚢胞(ふくびくうのうほう)とは…副鼻腔内に液体が溜まり嚢(のう:袋状の組織)を形成する病変です。副鼻腔は鼻腔とつながった空洞で、前頭洞+上顎洞+篩骨洞+蝶形骨洞 の4つの部位に分かれます。嚢胞ができると、その部位に圧迫感や違和感が生じることがあります。
副鼻腔嚢胞は、一般的に良性の病変であり癌化することは稀ですが、大きくなると副鼻腔の構造に影響を与えたり、周囲の組織を圧迫したりすることがあります。

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・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・含気骨疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、副鼻腔嚢胞が発生する主な原因には以下のようなものがあります。
|炎症の慢性化
副鼻腔炎(蓄膿症)/アレルギー性鼻炎 が長引くことで、副鼻腔内の粘膜が過剰に分泌物を作り、嚢胞が形成されることがあります。
|鼻腔の閉塞
鼻中隔湾曲症/ポリープ によって副鼻腔の排出経路が塞がると、粘液が滞留して嚢胞ができやすくなります。
|外傷/手術後 の影響
交通事故/スポーツ による鼻の外傷、過去の副鼻腔手術が原因で嚢胞が形成されることがあります。
|歯性病変(上顎洞嚢胞)
特に上顎洞(じょうがくどう)にできる嚢胞は、虫歯/歯の感染/歯科治療(インプラント など)が原因となることがあります。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、副鼻腔嚢胞においては嚢胞の大きさや位置によって異なりますが、主なものは以下の通りです。
|鼻づまり(鼻閉感)
特に嚢胞が大きくなると鼻が詰まった感じが強くなります。
|頭痛/顔面痛
副鼻腔の圧迫によって、額/頬/目の奥に痛みや圧迫感 が生じることがあります。
|鼻汁/後鼻漏(こうびろう)
副鼻腔内に溜まった粘液が喉に流れ込むことで、痰が絡むような症状が出ることがあります。
|嗅覚障害
嚢胞が嗅覚を司る篩骨洞(しこつどう)周辺にできると、匂いを感じにくくなることがあります。
|目の症状(眼窩内の圧迫)
まれに嚢胞が大きくなり目を圧迫することで、視力低下や眼球突出が起こることがあります。
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、副鼻腔嚢胞においては 症状の有無/嚢胞の大きさ によって異なり、以下になります。
|経過観察(無症状の場合)
経過観察(無症状の場合)
小さな嚢胞で症状がなければ、定期的に CT/MRI で経過観察を行う。
※特に治療をしないこともある
|薬物療法(軽度の症状がある場合)
薬物療法(軽度の症状がある場合)
炎症が関与している場合は以下のような薬を使用します。
> 抗生物質
細菌感染が疑われる場合。
> 抗アレルギー薬
アレルギー性鼻炎の影響がある場合。
> ステロイド点鼻薬
炎症を抑えるため。
|手術療法(症状が強い場合)
手術療法(症状が強い場合)
嚢胞が大きくなり、症状が出ている場合は手術が必要になります。
> 内視鏡下副鼻腔手術(ESS:Endoscopic Sinus Surgery)
鼻の穴から内視鏡を挿入して嚢胞を取り除く手術。
※傷が小さく回復が早いのが特徴
> 上顎洞根治術(Caldwell-Luc手術)
歯性病変による上顎洞嚢胞では、歯の治療と併せてこの手術が行われる事があります。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、副鼻腔嚢胞においては日常生活の中で以下の点に注意するとよいでしょう。
|鼻の健康を維持する
鼻の健康を維持する
副鼻腔炎/アレルギー性鼻炎 を放置せず早めに治療を行い、こまめに鼻をかむなどして副鼻腔内に分泌物が溜まらないようにする。
|鼻腔の清潔を保つ
鼻腔の清潔を保つ
生理食塩水を用いた鼻うがいを習慣化し、鼻腔内の炎症を防いだり、部屋の湿度を適切に保ち乾燥を防ぐ。
|免疫力を高める
免疫力を高める
バランスの良い食事や適度な運動に加え、十分な睡眠をとり免疫力を維持する。
|歯の健康を保つ
歯の健康を保つ
上顎洞に近い歯の感染が副鼻腔嚢胞の原因になることがあるため、虫歯や歯周病の予防に努める。
|外傷を防ぐ
外傷を防ぐ
スポーツや事故による鼻の外傷を防ぐため、適切な保護具を使用する。
おわりに
副鼻腔嚢胞は、副鼻腔内に液体が溜まることで形成される良性の病変ですが、大きくなると 鼻づまり/頭痛 などの症状を引き起こします。主な原因には 慢性的な炎症/鼻腔の閉塞/歯性病変 などがあり、症状が軽い場合は経過観察や薬物療法で対応可能ですが、重症化した場合は手術が必要になることもあります。予防のためには、鼻や歯の健康を維持し、適切な生活習慣を心がけることが重要です。