どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
:この記事は約7分で読めます
どんな病気?
重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)とは…自己免疫疾患の一種で、神経と筋肉の接合部(神経筋接合部)に異常が生じることで、筋肉の疲労や脱力が起こる病気です。主にアセチルコリン受容体(AChR)や関連タンパク質(MuSK など)に対する自己抗体が産生され、神経から筋肉への信号伝達が妨害されることで発症します。

この記事は次のような人におすすめ!
・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・運動神経疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、重症筋無力症においては免疫システムの異常による自己抗体の産生ですが、以下の要因が関与すると考えられています。
|自己免疫異常
自己免疫異常
体内で異常な抗体(アセチルコリン受容体抗体/MuSK抗体/LRP4抗体など)が作られ、神経から筋肉への信号伝達を阻害する。
|胸腺の異常
胸腺の異常
胸腺腫(良性腫瘍)や胸腺過形成がある患者が多く、免疫異常の発生に関連している可能性がある。
|遺伝的要因
遺伝的要因
遺伝的な素因が関与している可能性もあるが、明確な遺伝疾患ではなく、環境要因と組み合わさることで発症する。
|感染/ストレス/薬剤
感染/ストレス/薬剤
ウイルス感染やストレス、特定の薬(ペニシラミン/β遮断薬/カルシウム拮抗薬 など)が発症や悪化に関与することがある。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、重症筋無力症においては筋力低下が特徴であり、日中の活動によって悪化し、休息により回復するという特徴があります。
症状の現れ方は個人差がありますが、主に以下のようなものが挙げられます。
|眼症状(眼筋型MG)
眼症状(眼筋型MG)
- 眼瞼下垂(まぶたが下がる)
- 複視(ものが二重に見える)
|全身の筋力低下(全身型MG)
全身の筋力低下(全身型MG)
|顔/喉 の筋肉脱力
話しにくくなったり、飲み込みにくい=嚥下障害 などが起きる。
|首の筋力低下
首が支えにくい。
|体幹の筋力低下
歩行困難や腕が上がらなくなる。
|呼吸筋の低下
呼吸困難になり、重症例では人工呼吸器が必要になる事もある。
|症状の特徴
症状の特徴
疲労とともに症状が悪化し、休息をとると回復する。朝は軽いが、夕方になると症状が強くなる。
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、重症筋無力症においては症状の程度や原因に応じて以下のように選択されます。
|薬物療法
薬物療法
> コリンエステラーゼ阻害薬
神経伝達を強化し、筋力を改善する。(ピリドスチグミン など)
> 副腎皮質ステロイド
免疫抑制作用で自己抗体の産生を抑える。(プレドニゾロン など)
> 免疫抑制剤
ステロイドと併用し、免疫の過剰な働きを抑える。(アザチオプリン/シクロスポリン など)
|胸腺摘出術
胸腺摘出術
胸腺腫や過形成がある場合、手術で胸腺を摘出することで症状が改善する事がある。(特に胸腺腫がある場合)
|血液浄化療法
血液浄化療法
急性増悪時に、自己抗体を血液から除去するために行われる。(血漿交換/免疫グロブリン療法 など)
|生物学的製剤
生物学的製剤
難治性の重症筋無力症に対し、B細胞や補体を標的にした治療が有効なことがある。(リツキシマブ/エクリズマブ など)
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、重症筋無力症においては完全に防ぐ方法は確立されていませんが、以下の対策により発症リスクを下げたり、症状の悪化を防ぐことができます。
|感染症の予防
感染症の予防
風邪やインフルエンザなどの感染症が免疫系を刺激し、症状を悪化させる可能性があるため、手洗いやワクチン接種を行う。
|ストレス管理
ストレス管理
過度なストレスは免疫のバランスを崩し、症状を悪化させる可能性があるため、適度な休息やリラクゼーションを心がける。
|適切な運動
適切な運動
無理のない範囲で筋力維持のための軽い運動を行い、体力低下を防ぐ。
|薬剤の注意
薬剤の注意
特定の薬(β遮断薬/カルシウム拮抗薬/一部の抗生物質 など)は症状を悪化させる可能性があるため、医師と相談しながら薬を選ぶ。
|医療チェック
医療チェック
症状が軽いうちに適切な診断と治療を受けることで、重症化を防ぐ。
おわりに
重症筋無力症は、自己免疫によって神経筋接合部が障害される病気で、眼瞼下垂や筋力低下が特徴です。早期診断と適切な治療により、多くの患者が症状をコントロールしながら日常生活を送ることが可能です。