どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)とは…中枢神経系(脳/脊髄)の自己免疫疾患の一つです。免疫系が誤って神経細胞を覆う「ミエリン鞘(神経の絶縁体)」を攻撃し、炎症を引き起こします。これにより神経の伝達が阻害され、さまざまな神経症状が現れる病気です。症状の出方/進行の仕方 は個人差が大きく、寛解と再発を繰り返すことが多いのが特徴です。

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・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・運動神経疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、多発性硬化症の正確な原因は未解明ですが以下の要因が関与すると考えられています。
|自己免疫異常
自己免疫異常
免疫系が誤って自己のミエリンを攻撃することで炎症が起こり、神経の伝達機能が低下します。
|遺伝的要因
遺伝的要因
一定の遺伝的素因を持つ人が発症しやすいとされていますが、遺伝だけが原因ではありません。
|環境要因
環境要因
> ビタミンD不足
日照時間が短い地域で発症率が高いことが知られています。
※高緯度地域
> ウイルス感染
エプスタイン・バールウイルス(EBウイルス)などの感染が関連している可能性があります。
> 喫煙
喫煙者は非喫煙者に比べて発症リスクが高いことが分かっています。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、多発性硬化症は症状が多様で炎症が起こる部位によって異なり、主な症状は以下の通りです。
|視覚障害(視神経炎)
- 視力低下
- 視界のかすみ
- 色の識別困難
視界の一部が見えなくなる(暗点)などが生じる。
|運動障害
- 筋力低下
- 手足の麻痺
- 歩行困難
- 協調運動障害 ※ふらつき/震え
|感覚異常
- しびれ
- 痛み
- 焼けるような感覚
- 温度感覚の鈍麻
|疲労感
日常生活に支障をきたす程の強い疲労感を感じることが多い。
|排尿/排便 障害
- 頻尿
- 尿失禁
- 尿が出にくい
- 便秘
|認知機能障害/精神症状
- 記憶力低下
- 集中力の低下
- 抑うつ
- 不安
|その他
- めまい
- 言語障害
- 嚥下障害
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、現在において多発性硬化症を根治する治療法はありませんが、症状の緩和や進行を抑える以下のような治療が行われます。
|急性期治療(再発時の治療)
急性期治療(再発時の治療)
> ステロイドパルス療法
高用量のメチルプレドニゾロンを点滴投与し、炎症を抑える。
|病勢修飾療法(進行抑制)
病勢修飾療法(進行抑制)
> 免疫調整薬
- インターフェロンβ
- グラチラマー酢酸塩
> 経口薬
- フィンゴリモド
- テリフルノミド
- ジメチルフマル酸エステル
> モノクローナル抗体療法
- ナタリズマブ
- オクレリズマブ
|症状緩和治療
症状緩和治療
- 筋弛緩薬 ※痙縮の緩和
- 鎮痛薬 ※神経痛の管理
- 抗うつ薬/睡眠薬 ※精神症状の改善
|リハビリテーション
リハビリテーション
運動療法や理学療法を取り入れて、身体機能の維持および回復を図る。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、多発性硬化症を完全に防ぐ方法は確立されていませんが、リスクを減らすために以下の対策が推奨されます。
|ビタミンDの適切な摂取
- 日光を適度に浴びる ※紫外線を避けながらも適量のビタミンDを確保
- ビタミンDが豊富な食品を摂取 ※魚類/卵/きのこ類
|ウイルス感染の予防
手洗い/ワクチン接種 で感染症予防を徹底する。
|禁煙
喫煙はMSの発症リスクを高めるため、禁煙が推奨される。
|健康的な生活習慣
バランスの良い食事/適度な運動、およびストレス管理を心がける。
|環境要因の管理
汚染された空気/有害化学物質 を避けることも一つの予防策となる。
おわりに
多発性硬化症(MS)は、自己免疫の異常によって中枢神経系のミエリンが損傷される疾患であり⇒視覚障害・運動障害・感覚異常・疲労 などの多様な症状を引き起こします。治療には ステロイド/免疫調整薬 が用いられ、症状をコントロールすることが可能です。予防には⇒ビタミンDの適切な摂取・禁煙・ウイルス感染の回避 が重要です。早期発見と適切な治療により、生活の質を維持しながら病気と向き合うことができます。