どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう:Amyotrophic Lateral Sclerosis=ALS)とは…運動ニューロンが徐々に変性して筋力 低下/萎縮 を引き起こす、進行性の神経変性疾患です。運動ニューロンには脳の「上位運動ニューロン」と脊髄の「下位運動ニューロン」があり、これらが障害されることで随意運動が困難になります。
発症すると⇒手足の筋力低下・嚥下障害・発話困難・呼吸障害 などが徐々に進行し、最終的には呼吸筋が侵されることで生命の危機に至ります。

この記事は次のような人におすすめ!
・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・運動神経疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、ALSにおいては未だに未解明ですが以下の要因が関与していると考えられています。
|遺伝的要因
ALSの約5~10%は遺伝性(家族性ALS)であり SOD1/TDP-43/FUS などの遺伝子変異が関連しています。
|環境要因
- 農薬
- 重金属(鉛/水銀)への曝露
- 喫煙
- 過度な運動
- ウイルス感染
一部の研究では上記などが、リスクを高める可能性があると指摘されています。
|異常タンパク質の蓄積
TDP-43/SOD1 などの異常タンパク質が神経細胞内に蓄積して、細胞の 機能障害/死滅 を引き起こすと考えられています。
|酸化ストレス+ミトコンドリア機能障害
活性酸素による 酸化ストレス/エネルギー を供給するミトコンドリアの異常が、神経細胞死を誘発するとされています。
|免疫/炎症反応 の異常
グリア細胞の異常な活性化が慢性的な炎症を引き起こし、運動ニューロンの破壊を促進すると考えられています。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、ALSにおいては個人差があり一般的には以下のように進行します。
|初期症状
初期症状
> 四肢の筋力 低下/萎縮
物を持ちにくい/歩きずらい など。
> 筋肉の けいれん/こわばり
特に 手/足 に多い。
> 言語障害
呂律が回らず声が出しにくい。
|進行期の症状
進行期の症状
> 全身の筋力 低下/萎縮
運動機能の著しい低下。
> 嚥下障害
食べ物/水 が飲み込みにくくなる。
> 呼吸筋の低下
呼吸困難/人工呼吸器 が必要になる場合も。
|末期症状
末期症状
- 意識は保たれ運動機能がほぼ完全に失われる
- 人工呼吸器なしでは生命維持が困難になる
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、現在の医学ではALSを完治させる方法は存在しませんが、以下のような治療で進行を遅らせて症状を和らげることができます。
|薬物療法
薬物療法
> リルゾール(Riluzole)
グルタミン酸の過剰放出を抑え、病気の進行を遅らせる効果がある。
> エダラボン(Edaravone)
酸化ストレスを抑えることで、神経細胞の損傷を軽減するとされる。
|リハビリテーション
リハビリテーション
> 理学療法
関節の可動域を維持して筋力低下を遅らせる。
> 作業療法
日常生活をできる限り自立して行えるように支援。
> 言語療法
発話/嚥下 の訓練を行う。
|人工呼吸器/栄養管理
人工呼吸器/栄養管理
進行すると胃ろう(PEG)を用いた栄養補給や、人工呼吸器が必要になる場合がある。
|その他(研究中)
その他(研究中)
幹細胞療法/遺伝子治療 が研究されており、『新たな治療法』の開発が進んでいる。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、ALSにおいては明確な方法は確立されていませんが、以下のような生活習慣によってリスクを軽減する可能性があります。
|抗酸化作用のある食品
抗酸化作用のある食品
ビタミンEやC/ポリフェノール を含む食品を積極的に摂取する。
※⇒ナッツ類・緑黄色野菜・ベリー類 など
|適度な運動
適度な運動
過度な運動はリスクを高める可能性があるため、無理のない範囲で継続的な運動を行う。
|有害物質の曝露を避ける
有害物質の曝露を避ける
- 農薬
- 重金属
- 化学物質
上記にできるだけ触れないようにする。
|禁煙/適度な飲酒
禁煙/適度な飲酒
喫煙はALSのリスクを高める可能性があるため【禁煙】を推奨しており、過度のアルコール摂取も避ける。
|ストレス管理+睡眠
ストレス管理+睡眠
ストレスを溜め込まずに質の良い睡眠を確保することで、神経の健康を維持する。
|脳の活性化
脳の活性化
- 読書
- パズル
- 楽器演奏
上記などの脳を使う活動を習慣化する。
おわりに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが変性し、全身の筋力低下を引き起こす進行性の神経疾患です。原因は遺伝的要因や環境因子などが関与していると考えられていますが、正確には解明されていません。現在の治療法では進行を遅らせることはできても完治させることは難しく、対症療法が中心となります。予防策は確立されていないものの、健康的な生活習慣がリスクを下げる可能性があります。今後の研究によって、新たな治療法や予防法が確立されることが期待されています。