どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
消化管運動異常(しょうかかんうんどういじょう)とは…⇒食道・胃・小腸・大腸 といった消化管の蠕動運動(ぜんどう うんどう)が正常に機能せず、食物の 消化/移動 が妨げられる状態を指します。これにより⇒消化不良・便秘・下痢・腹痛 などの症状が現れます。
消化管の運動は⇒自律神経系(交感神経/副交感神経)・消化管ホルモン・腸内神経系(腸管神経系) によって制御されており、これらの機能が乱れると運動異常が発生します。

この記事は次のような人におすすめ!
・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・平滑筋疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、消化管運動異常において引き起こす原因は複合的であり、主に以下のような要因が関与します。
|神経系の異常
神経系の異常
- 自律神経失調症
- パーキンソン病/糖尿病による神経障害
- 腸管神経の機能低下
|ホルモン/代謝異常
ホルモン/代謝異常
- 糖尿病による胃の運動障害 ※糖尿病性胃不全麻痺
- 甲状腺機能低下症 ※低下すると腸の蠕動が遅くなる
|薬剤の影響
薬剤の影響
- 抗コリン薬/麻薬性鎮痛薬/抗精神病薬 などが抑制する
- 下剤の乱用による腸管の機能低下
|消化器疾患
消化器疾患
- 過敏性腸症候群 ※IBS
- 機能性ディスペプシア ※FD:胃の運動異常
- 慢性便秘症
|生活習慣/心理的要因
生活習慣/心理的要因
- ストレス/不安 による腸の過敏性亢進 ※過敏性腸症候群 など
- 食生活の乱れ ※食物繊維不足/脂肪過多 の食事
- 運動不足
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、消化管運動異常においてはどこの部位に異常が生じるかによって現れる症状が異なり、主に以下の通りです。
|食道の運動異常
食道の運動異常
- 嚥下障害 ※食べ物が飲み込みにくい
- 胸やけ/逆流 ※GERD:胃食道逆流症
- 胸の痛み
|胃の運動異常
胃の運動異常
- 胃もたれ/膨満感
- 早期満腹感 ※少し食べただけで満腹になる
- 吐き気/嘔吐
|腸の運動異常
腸の運動異常
- 便秘 ※腸の蠕動が弱い
- 下痢 ※過剰な蠕動運動
- 腹痛/膨満感
- 過敏性腸症候群(IBS)によるガスの増加
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、消化管運動異常においては原因に応じて異なりますが、主に以下の方法が用いられます。
|薬物療法
薬物療法
> 消化管運動促進薬(プロキネティクス)
- イトプリド/モサプリド ※胃の運動を促進
- メトクロプラミド ※胃の動きを改善
> 緩下剤(便秘時)
酸化マグネシウム/ルビプロストン など。
※腸の動きをサポートする
> 止瀉薬(下痢時)
ロペラミド など。
※腸の運動を抑える
> 抗不安薬/抗うつ薬(ストレスが関与する場合)
SSRISもしくはNRI。
※脳腸相関の調整
|生活習慣の改善
生活習慣の改善
> バランスの取れた食事
食物繊維や発酵食品を摂取する。
> 適度な運動
ウォーキングなどで腸の動きを活発にする。
> 規則正しい食生活
朝食をしっかり摂ることで腸の活動を促す。
> ストレス管理
ヨガ/マインドフルネス など。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、消化管運動異常においては日常生活での予防策を取り入れることで、消化管運動異常のリスクを低減する事が可能であり、主な方法は以下の通りです。
|規則正しい食生活
規則正しい食生活
- 食物繊維を十分に摂る ※⇒野菜・果物・全粒穀物 など
- 発酵食品を取り入れる ※⇒ヨーグルト・味噌・納豆 など
- 過剰な脂質/加工食品 の摂取を控える
|適度な運動
適度な運動
- 毎日30分以上の ウォーキング/ストレッチ を行う
- 腹部マッサージで腸の蠕動を促す
|ストレス管理
ストレス管理
- 睡眠をしっかりとる ※6〜8時間の良質な睡眠
- リラックスできる 趣味/運動 を取り入れる
|水分摂取を心がける
水分摂取を心がける
1日1.5〜2Lの水を飲むことで腸内の動きをスムーズにする。
|薬剤の乱用を避ける
薬剤の乱用を避ける
下剤/胃薬 を長期間使用しない。
※依存すると腸の動きが悪化するので注意が必要
おわりに
消化管運動異常は 神経/ホルモン/ストレス/生活習慣 など様々な要因で引き起こされ、症状は⇒便秘・下痢・腹痛・胃もたれ など多岐にわたります。治療には薬物療法や生活習慣の改善が中心となりますが、予防のためには 食事+運動+ストレス管理 が重要です。もし持続的な消化管の異常がある場合は、自己判断せずに消化器内科を受診し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。