どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
膵性糖尿病(すいせいとうにょうびょう)とは…「膵臓の病気」が原因で起こる糖尿病の一種で、二次性糖尿病(特定の原因がある糖尿病)に分類されます。膵臓は、インスリンなどのホルモンを分泌する内分泌機能と、消化酵素を分泌する外分泌機能を持ちますが、慢性膵炎や膵がんなどの病気でこれらの機能が障害されると血糖の調整ができなくなり糖尿病になります。
ICD-10では「他の疾患または条件に伴う糖尿病(E13)」に分類され、一般的には「タイプ3c糖尿病(T3cDM)」とも呼ばれます。
ヤマケンこの記事は次のような人におすすめ!
・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・膵臓疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、膵性糖尿病においては膵実質の破壊や機能低下によって、インスリンの分泌が不十分になる事です。代表的な要因は以下の通りです。
|慢性膵炎
最も多い原因になります。長期の炎症により膵臓が硬くなり、機能が低下する事により引き起こされます。
|膵がん
膵組織を破壊し、ホルモン分泌も阻害する。
|膵臓手術後
膵臓の一部または全部を切除した後に発症します。
|遺伝病
若年でも膵性糖尿病を発症しうる。
※遺伝性膵炎/嚢胞性線維症 など
|外傷/膵石症
膵臓が物理的に傷つくことで発症します。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、膵性糖尿病においては通常の糖尿病と似ていますが、より重症化しやすく栄養吸収障害も併発しやすいのが特徴であり、以下になります。
|高血糖
- 多飲
- 多尿
- 口渇
- 体重減少
- 疲労感
|消化酵素不足
- 下痢
- 脂肪便
- 腹部膨満
- 栄養失調
|重度のインスリン分泌低下
ケトーシス/低血糖発作 を起こす事もあります。
|その他
ビタミン/脂溶性栄養素(A,D,E,K) の欠乏などの兆候がみられます。
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、膵性糖尿病においてポイントは、血糖管理+膵外分泌機能補充+原疾患 の治療3本柱であり以下になります。
|血糖コントロール
血糖コントロール
> 軽度
経口糖尿病薬。
※インスリン分泌促進薬は効きにくい
> 中等度〜重度
インスリン療法が第一選択。
※内因性インスリンが極端に少ないため
|膵外分泌不全への対応
膵外分泌不全への対応
> 膵酵素補充療法
パンクレリパーゼなどがあります。
> 食事指導
脂肪を減らして 分割食/消化しやすい食材 の摂取を心掛ける。
|原因疾患の治療
原因疾患の治療
> 慢性膵炎/膵がん
- 薬物療法
- 手術
- 断酒
|栄養補助
栄養補助
- ビタミンA・D・E・K
- 亜鉛
- カルシウム
- 高カロリー食
- 栄養療法(場合により経腸栄養)
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、膵性糖尿病において直接予防することは難しいですが、膵臓を障害するリスクを減らすことが予防に繋がり以下になります。
- 過剰なアルコール摂取を控える(慢性膵炎予防)
- 胆石症/高脂血症 の治療
- バランスの取れた食生活+定期的な運動
- 膵臓病の早期発見(腹部超音波/CT/MRI など)
- 膵手術後の血糖管理を早期から実施
- 定期的に 血糖/膵機能 のチェック(糖尿病家系の場合)
おわりに
膵性糖尿病は、膵臓の疾患によって起こる重篤な糖尿病の一形態であり、血糖調整だけでなく、消化/栄養面 まで多角的な管理が必要です。この病は見逃されやすく、2型糖尿病と誤診されることも多いため、膵臓疾患の既往がある患者では特に注意が必要です。

