どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
頭蓋縫合早期癒合症(とうがいほうごうそうきゆごうしょう)とは…本来は幼児期に徐々に閉じるべき頭蓋骨の縫合(骨の継ぎ目)が、異常に早く癒合してしまう病気です。通常、頭蓋骨の成長は脳の発達とともに進み、縫合が開いた状態を維持することで正常な頭部の形状が形成されます。しかし、この病気では一部の縫合が早期に閉じてしまうため、頭蓋骨の成長が制限され、頭の形が変形したり脳の発達に影響を及ぼすことがあります。

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・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・扁平骨疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、頭蓋縫合早期癒合症においては未だ完全に解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
|遺伝的要因
遺伝的要因
家族内での発症例が多いことから、遺伝的な影響が指摘されています。特定の遺伝子変異(FGFR遺伝子/TWIST1遺伝子 など)が関係していることが判明しています。クルーゾン症候群/アペール症候群/ファイファー症候群 などの遺伝性疾患の一症状として発症することがあります。
|環境要因
環境要因
- 妊娠中の ビタミン不足/葉酸欠乏
- 妊娠中の 喫煙/アルコール摂取/薬剤使用 ※特定の抗けいれん薬 など
- 胎内での異常な圧力 ※羊水過少症/胎位異常
|自己免疫異常/代謝異常
自己免疫異常/代謝異常
骨代謝に関与する ホルモン/酵素 の異常が原因で、頭蓋縫合が早期に硬化する可能性があります。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、頭蓋縫合早期癒合症においては、どの縫合が早期癒合するかによって異なります。主な症状には以下のようなものがあります。
|頭部の形状異常(代表的なタイプ)
頭部の形状異常(代表的なタイプ)
> 矢状縫合早期癒合(頭頂部中央の縫合)
・長頭症 ※頭が前後に長くなる
> 冠状縫合早期癒合(左右の前頭部を横断する縫合)
・短頭症 ※頭が横に広がり額が平坦
> 冠状縫合の片側のみ癒合
・斜頭症 ※頭が左右非対称になる
> ラムダ縫合早期癒合(後頭部の縫合)
後頭部の非対称変形
> 全頭蓋縫合早期癒合(複数の縫合が同時に癒合)
頭蓋骨の発育不全による頭囲の増加制限
|脳への影響
脳への影響
脳が十分なスペースを確保できず、頭蓋内圧亢進(こうしん)が発生する事もある。
> 症状
- 頭痛
- 嘔吐
- 視力障害(視神経圧迫)
- 注意力低下
- 発達遅滞
※重症例では 精神発達遅滞/てんかん を引き起こす
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、頭蓋縫合早期癒合症においては重症度や症状に応じて外科手術が行われます。以下のように早期に診断して適切な治療を受けることで、正常な頭蓋骨の成長と脳の発達を促すことができます。
|頭蓋形成術(クラニオプラスティー)
頭蓋形成術(クラニオプラスティー)
頭蓋骨を部分的に切開し、正常な成長ができるように再配置する手術。
※6か月~1歳ごろに行われるのが一般的(脳の成長に最も影響を与えにくい時期)
|内視鏡手術(軽度の場合)
内視鏡手術(軽度の場合)
- 小さな切開で行い癒合した縫合を除去
- 早期に行う必要がある ※生後3~6か月以内
- 術後にヘルメット矯正を併用して頭の形を整える ※ヨガ/水泳 などで関節の柔軟性を保つ
|ヘルメット療法(軽度の場合)
ヘルメット療法(軽度の場合)
軽度の頭蓋変形に対し、成長に合わせてヘルメットで頭の形を矯正する。早期に開始する必要があり、通常は生後3〜12か月まで適用される。
|症候群性の追加治療
症候群性の追加治療
遺伝性疾患に伴う場合、整形外科/眼科/耳鼻科 などの多領域での治療が必要になることがある。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、頭蓋縫合早期癒合症において現時点で確実な方法は確立されていませんが、以下のような対策がリスクを下げる可能性があります。
|妊娠前/妊娠中 の栄養管理
妊娠前/妊娠中 の栄養管理
- 葉酸/ビタミンD/カルシウム を適切に摂取する ※骨の成長を助ける
- 偏った食事を避けてバランスの良い食事を心がける
|妊娠中の生活習慣
妊娠中の生活習慣
- 喫煙/アルコール摂取/薬物使用 を控える
- 医師と相談のうえ胎児に影響を及ぼす可能性のある薬を避ける
|妊娠中の健康管理
妊娠中の健康管理
- 定期的な妊婦健診を受けて胎児の発育状態をチェックする
- 胎内での異常な圧力を早期に発見する ※羊水量の異常 など
|出生後の頭形チェック
出生後の頭形チェック
乳児期の頭の形を定期的に確認し、異常があれば早期に小児科や専門医を受診する。
おわりに
頭蓋縫合早期癒合症は、頭蓋骨の縫合が異常に早く閉じることで起こる病気で、頭の形の変形や脳の発育への影響を引き起こす可能性があります。遺伝的要因や環境要因が関与すると考えられていますが、確実な予防法はまだ確立されていません。治療の中心は外科手術であり、早期発見と適切な処置によって良好な経過が期待できます。出生後の頭の形に注意を払い、異常が見られた場合は早めに専門医に相談することが重要です。