どうも、担当者のヤマケンです→今回の疾病はいったいどのような病態なのでしょうか?それでは皆さん、御一緒に診ていきましょう。
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どんな病気?
拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)とは…心臓の筋肉(心筋)が異常に拡張して収縮力が低下することで、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。心室(特に左心室)が拡張して壁が薄くなりポンプ機能が低下することが特徴で、進行すると心不全を引き起こし、重篤な場合は致命的な不整脈や突然死のリスクが高まります。

この記事は次のような人におすすめ!
・身体の不調で当てはまりそうな病気を探している
・心筋疾患について勉強している
・知的好奇心が旺盛
1.原因


原因とは…病気の発症メカニズム(病因論)の中でその役割が科学的に証明されることで認識され、複数の要因が相互に影響し合って病気を引き起こす場合もあり、それは 誘因/危険因子 として区別され「その疾患を成立させるために必要で且つ十分な条件」と定義できます。
以上を踏まえると、拡張型心筋症においては多岐にわたりますが大きく分けて以下の要因が挙げられます。
|遺伝的要因
約30~50%の患者に家族歴が認められ、遺伝子変異が関与していると考えられています。
|ウイルス感染
ウイルス性心筋炎(コクサッキーウイルス/パルボウイルス など)がきっかけで心筋が損傷し、慢性的に拡張型心筋症へ進行することがあります。
|自己免疫異常
免疫系が誤って心筋を攻撃して、炎症や線維化を引き起こすことで心筋の機能が低下します。
|毒性物質
過度のアルコール摂取(アルコール性心筋症)、一部の抗がん剤(ドキソルビシン)、コカインなどの薬物が心筋にダメージを与えます。
|代謝異常
糖尿病/甲状腺機能低下症/栄養障害(ビタミンB1欠乏 など)が心筋に悪影響を及ぼすことがあります。
|その他
高血圧/虚血性心疾患 が長期間続くと、心筋がダメージを受けて拡張型心筋症のような状態になることがあります。
2.症状


症状とは…患者自身が主観的に認識する身体的または精神的な異常のことを指し、これは医療者が観察可能な徴候(しるし)と区別され⇒痛み・疲労・吐き気・不安 など、患者の自覚に基づく訴えが中心です。
症状は病気の診断や治療方針の決定において重要な情報源であり、患者と医療者のコミュニケーションを通じて初めて明らかになる点が特徴で、拡張型心筋症においては 心不全に伴うもの/不整脈によるもの であり、主な症状は以下の通りです。
|心不全症状
心不全症状
> 息切れ(呼吸困難)
特に運動時や横になったときに悪化する。
> 倦怠感/疲労感
血流の低下により全身の酸素供給が不足するため。
> 浮腫(むくみ)
血液がうっ滞し、特に 足/足首 が腫れる。
> 夜間頻尿
夜に尿の排出が増える。
※心不全による体液の再分配
|不整脈による症状
不整脈による症状
- 動悸 ※心臓が異常に速くなる/不規則に拍動する
- 失神/めまい ※重篤な不整脈が原因
|血栓塞栓症
血栓塞栓症
心臓内の血流が滞ることで血栓(血の塊)が形成され、脳梗塞や肺塞栓を引き起こすことがあります。
3.治療


治療とは…病気やケガなどの健康状態の異常を 改善/回復 させることを目的として行われる行為や介入を指し、具体的には⇒薬物療法・手術・リハビリテーション・心理的支援 などの方法が含まれ、症状の軽減/原因の除去/生活の質向上 を目指します。
治療の本質は科学的根拠に基づき、患者個々の状況に応じた最適な介入を選択することにあり、拡張型心筋症においては心不全の進行を抑え、症状を軽減し突然死のリスクを下げることです。その為には以下の方法が用いられます。
|薬物療法(第一選択)
薬物療法(第一選択)
> β遮断薬
カルベジロール/ビソプロロール など。
※心臓の負担を軽減して心機能を改善
> ACE阻害薬 /ARB
エナラプリル/ロサルタン など。
※血圧を下げて心臓の負担を減らす
> 抗アルドステロン薬
スピロノラクトン。
※体内のナトリウムを排出してむくみを軽減
> 利尿薬
フロセミド など。
※体液量を減らして心不全症状を緩和
> 抗不整脈薬
アミオダロン など。
※重篤な不整脈を予防
> 抗凝固薬
ワルファリン/DOAC など。
※血栓を防ぐ
|デバイス治療
デバイス治療
> 植込み型除細動器(ICD)
致死性不整脈のリスクが高い場合に、心停止を防ぐため埋め込む。
> 心臓再同期療法(CRT)
心臓の電気的な伝導異常を補正し、心機能を改善する。
|心臓移植 /補助人工心臓(LVAD)
心臓移植 /補助人工心臓(LVAD)
重症例では、最終手段として心臓移植が選択されることがあります。また、移植までの橋渡し治療や長期的な管理として、補助人工心臓(LVAD)を用いることもあります。
4.予防


予防とは…病気が発生する前にそのリスクを減少させる、または病気の進行を抑制し健康を維持するための 行動/介入 を指し、これには⇒一次予防(発症の防止)・二次予防(早期発見と治療)・三次予防(病状の悪化防止)が含まれます。
予防は個人の行動+社会環境+医療介入 の三位一体で行われるものであり、拡張型心筋症を完全に防ぐことは難しいですがリスクを減らすために以下の対策が有効です。
|生活習慣の改善
生活習慣の改善
- バランスの取れた食事 ※塩分/脂質 を控えて カリウム/マグネシウム を適度に摂取
- アルコールの過剰摂取を避ける
- 適度な運動+心臓に過度な負担をかけない ※過度なスポーツ/急激な運動 は避ける
- ストレスを管理して十分な睡眠を確保する
|基礎疾患の管理
基礎疾患の管理
- 高血圧/糖尿病/甲状腺機能異常 などを適切に治療する
- ウイルス感染を防ぐ為に 手洗い/予防接種 を徹底する ※インフルエンザ/新型コロナウイルス など
|遺伝的リスク
遺伝的リスク
家族歴がある場合は、心エコー/心電図検査 を定期的に受ける。
おわりに
拡張型心筋症は心筋が拡張しポンプ機能が低下する疾患であり、心不全や不整脈のリスクが高まります。遺伝的要因や⇒ウイルス感染・毒性物質・代謝異常 などが原因となります。治療は主に 薬物療法/デバイス治療 が中心で、重症例では心臓移植が必要になることもあります。予防のためには、生活習慣の改善や基礎疾患の管理に加えて定期検診が重要です。